実加子>
大介クン、返信ありがとう。
大介クンはイルカに同調できるからいいわね。でも、多くの人はそんなこと考えもしないし、感じないものよ。それが問題だと思うの。問題というか、もったいないと思うと言った方が正確かな。
ある科学者が「人間はもう進化しない」と言ったそうだけど、私はそんなふうには思っていない。人間も生物であるのだから進化する。たとえば、いままで放射性物質にはほとんどさらされていなかったけど、311のおかげでかなりさらされてしまう状態になってしまった。その結果、人間はやむなく進化というか、変化せざるを得なくなる。その結果、何が起こるのか、これから数十年、数百年で未体験ゾーンに突入するんだろうけど、それを人類は受け入れるしかないのよね。同様に、いままでなかったものが次々生まれることで、人間は影響を受けて進化していく。
宇宙に出て行くことも進化のきっかけよね。水のなかにいた生物が陸に上がってきて進化したように、重力圏内にいた生命が重力圏外に出て行けば自然と変化してしまう。人間はいま一生懸命重力圏外に出ても身体的変化が起きないように頑張っているけど、それはもう無理だと思う。重力圏外に行ってしまえば、身体は確実に変化してしまう。現在の私たちは人間は四肢があって、目があって、鼻があって、口が一つで、と思っているけど、重力圏外に出たときどう変化していくのかは行ってみないとわからない。そして、そのような変化を人類が受け入れるかどうかが問題になって来ると思う。
ニワトリを遠心分離機で育てた話って知っている? ある科学者が、もし1Gより大きな重力でニワトリを育てたらどうなるかを調べたくて、遠心分離機で何ヶ月かニワトリを育てたんだって。すると、ニワトリの写真をフォトショップで縦の比率を圧縮したような姿のニワトリになったんだって。重力に耐えて立っているために筋肉が発達して、骨が太くなったそうよ。だからもし重力が少なくなれば、きっと縦長でひょろっとしたニワトリができるんだと思う。でも、それだって、数ヶ月だけのことだからね。もっと長かったら、さらにどんな変化が現れたのか興味がある。そして、もし無重力の状態になったら、上下という感覚がなくなってしまうので、球に近い生命体になるのではないかと言われている。つまり、人間も丸くなるかもしれないのよ。馬鹿げていると思うかもしれないけど、本当よ。
話がちょっと飛んでしまったわね。なんでこんな話したのかしら? そうそう、進化。進化の過程で私たちは常識の崩壊を体験する。それはたいてい知らず知らずのうちに起きて来る。たとえば、30年前にスマホの話をしても、絶対信じてもらえなかったそうよ。知り合いのおじさんが、「いつか携帯電話が小さくなって、そこでスケジュール管理も書類の処理もできるようになる」と言ったら、当時のコンピューター製作に関わっていた人が、そんなことは絶対無理だと喧嘩したって話を聞いたことがある。でも、いまでは「そんなことあったの?」って感じよね。
だから大介はある意味、人類の進化の過程の先っちょにいるんだと思う。そして、その先っちょは、いろんな分野に生まれつつあって、本当に他人の自由を許していけば、いろんな人類が生まれてくるんじゃないかと思うの。水の中で生きる人類とか、無重力で生きる人類とか、動物とコミュニケーションを取る人類とか、コンピューターのデータ処理に追いついていく人類とか。そうなっていくと、人類というくくりはもっと別のくくりになっていくわよね。それを許すかどうか、いまの私たちがどう考えるかにかかっていると思うの。もしみんながみんな平均的な「よい子」を作りましょうって教育を続けていったら、そういうふうにはならないかもね。そうなっていくのは、正しいか間違っていかって、なかなか言いにくい問題だと思う。